サーカスの子供
著者 ジョンアービング 新潮文庫
この2週間はずっとこの「サーカスの子供」を読んでいました。
「ガープの世界」「ホテルニューハンプシャー」など、、読み応えのある本を世に送り出す作家だとわかっていたのですが、久しぶりに文庫で新刊が出ていたので購入してしまったら、、いや~~面白かったです。やはり読み応えたっぷりでした。本当に読書が楽しい2週間だったと思います。
(ただし、彼の作品には、必ずといっていいほど、リアルに性的で暴力的なシーンが登場するので、そういうところが嫌いという読者も多いとおもいます、本書もその他の作品にたがわず、そういうシーンが何度か出てきます)。
作者はインドには一ヶ月しか滞在したことがなく、本書を書き上げたといいます。創作って、物語ってこういんだよな。そんな風に思えた作品でした。
インドを舞台に、サーカス、不具な子供たちのための病院、富裕な人々が過ごす高級会員制クラブなどをメインの舞台に、主人公の整形外科医とサーカスの小人、映画監督や脚本家、俳優や女優などハリウッドの人々、イエズス会の僧侶、ヒンズー教徒、イスラム教徒、ゾロアスター教徒、連続殺人犯、ヒジュラという男でも女でもない立場で暮らす人々、売春宿、ドラッグの売人、エイズ患者などなどなど、が繰り広げるストーリーは、まるでアラビアンナイトを読んでいるかのようでした。
インドの光と影、富と貧困、東洋と西洋、人生観、哲学、生命、、いろいろなことを順繰りで深く考えてしまう、そんな複雑なストーリーになっていました。
あまりにも深刻な貧困や格差に手の施しようがない善良な心の持ち主は、自分の善良ではない身勝手な心に苦しむことでしょう。足が不自由な浮浪児を救いたいと思い、サーカスに入れようと奮闘している宣教師に、主人公の医者は、「そんなにあの子に慈善がしたいなら、どうして養子にしないんだ?」とそれは言わない約束のひとことを言ってしまう。。「宣教師は、それではあの子たちの自立にならない」と抗弁しますが、医師はその言葉に「空々しくて反吐がでるね」と切り替えします。(ぜひとも曽野綾子に言っていただきたいセリフです)
結局はいくら宣教師でも自分の身内でもなんでもないから、慈善は中途半端になってしまうのだろうか?出来る限り最善などというが、、どうかんがえても最善なのは養子にすることなのに。。それでは子供を甘やかすことになるんでしょうかね?
本書で何度か登場するイエズス会批判は痛快でした。ローマ法王は何故あんな豪華な法衣を脱ぎ捨てて、ジーパンでもモンペでもいいからラフな服装で困っている人たちを助けにいかないのか。豪華なステンドグラスのある教会など作らずに、そこは子供たちの無料学校や避難所にすればいいのに。神に祈るのに場所など必要ないと思うのに。いつも疑問に思っていました。カトリックはそういう宗派だからってことで納得するしかないのでしょうね。
(一部の仏教のお坊さんも偉くなると服装がど派手になるのも同様に疑問ですが、あれは仏教界のカトリックと考えればよいのでしょうか?)
本書の主人公の医者は徹底的に信仰嫌いでしたが、あるとき改宗してちょっとだけキリスト教徒になったりします。そのへんのくだりも非常に面白いです。
いくつか、心に残った節を書きとめておきたいと思います。
わたしはもう三十九ですよ。もし司祭になるんだったらとっくになってなきゃおかしいんです。三十九にもなって、まだ”天職を見つける”だなんて浮ついたことを言っているようじゃ、きっと駄目なんです。
天職かぁ、、世の中に暮らす三十九歳以上のひとびとはみんな天職についているのかなぁとふと考えてしまいました。
暴力は不変だ。いつだって、最後まで残るものは暴力なのだ。
インドで頻発する暴動に対する主人公の思いですが、、悲しい言葉でした。。
暴力や貧困、差別、、そんな世界で決して美しさを失わないもの、、それは夢想。。空想なのでしょうか?だとしたら、宗教や物語は世界に必要ということになりますね。
誰かと、この本について語り合いたいです。会う友人には必ず勧めてみようと思います。
ちょうどこの本に出会うちょっと前に、本屋で「できるかなシリーズ」を立ち読みして、作者の西原理恵子がインドでヒジュラのお祭りに行く話を写真入りで見ていたので、ヒジュラについてはすんなりとイメージが湧きましたが、本書だけだと日本人にはとてもイメージがわかないかもしれません。ニューハーフというか、オカマちゃんというか、そんな感じの存在ですが、宗教的な儀式に呼ばれ踊りや祈祷などをする畏怖される存在であり、同時にカーストの世界では最下位に属して差別される不可触賎民だということです。
本書を読むと、世界は広いな、大きいなと嫌でも思ってしまいます。本書のストーリー自体が小宇宙そのもののようにも思えました。
自分はいつかインドに行くことがあるのでしょうか?とても行ってみたいような、でもあえて行かなくてもいいような。。そんな気持ちにさせる一冊です。
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