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2008年7月15日 (火)

天国に一番近い島

著者 森村桂 角川文庫

久しぶりに再読しました。この本は、作者の森村桂さんが訪れた1960年代のニューカレドニアの話ですが。数年前に訪れたニューカレドニアの印象は、この小説と大きく変わっていませんでした。変に観光地化されずに、寂れた印象がこの国の自然を残す良い結果になったのかと思います。

今回は、作者がうつ病を患って亡くなっていることを知ってからの再読ですので、主人公としてこの小説に登場する元気で明るい作者の心の裏にある、感受性の強さや、心のゆらぎ、弱さなどを気にしながらついつい読んでしまいました。

たしかに、入社2年で仕事が忙しすぎてからだの具合が悪くなり、結局会社を辞めてしまった状態は、よく考えればうつの症状のように思えます。そして、突然遠い南の島を天国に一番近い島と限定して、猪突猛進に旅立ってしまったことは、躁の症状のようにも見受けられます。

そんな、弱り、疲れきっていた彼女の心身に、ニューカレドニアの住民や豊かな自然はとてもよい治療の効果を与えたのでしょう。おそらく、彼女はすっかりうつ状態を脱することができ、天賦の文章の才能を活かして、ベストセラー作家になれたのだと思います。

しかし、彼女のもともとの感受性の豊かであったため、晩年に結局重度なうつ病を再発してしまったように思えます。

先日、自殺白書というのが発表され、日本の自殺の原因の一位はうつ病とのことでした。

ところがいまだに、多くの人がうつ病は甘えや、こころの弱さや、根性が足りないためにかかる病気と勘違いしている人が多く驚かされます。

この病気は、骨折のように、さまざまな原因で発生し、そして罹患してしまうと、とても不自由な病気で、この病気になりたくてなるような人は誰もいないということが理解されていないのです。

生まれつきの体質で骨が弱い人、交通事故で急に骨折する人、運動のし過ぎで疲労骨折になる人など、骨折にも色々な原因があるように、生まれつきの性格や生い立ちで感受性が強く傷つきやすかったためにうつ病になる人もいるし、強いストレスを継続して受けつづけ我慢の限界で鬱病になる人もいますし、そして愛する人の死などの強い衝撃で突発的にうつ病にかかるひともいます。決して逃避の先に発病があるのではなく、脳の物質に異常が起こるわけで、自分ではどうすることもできないのです。

予防をするとしたら、やはりストレスを避けることなのかもしれませんが、そうそうストレスを避けて暮らせることも社会人ではできないと思います。

そして、重度なうつ病になってしまうと、それはストレスをとりのぞけばそれで治るという病気ではないということも、あまり理解されていないように思えます。

たまたま、自分の周囲にはうつ病を患って休職したり、入院したり、療養中の人などが多いため、話に聞いたり、また、自分もうつ気質で、不眠などで苦しむことがよくあり、うつ病の辛さをよく知ることができましたが、やはりまだまだ世間の理解は足りていないと強く感じます。

天国に一番近い島は、本当に素晴らしい小説で、作者の森村桂さんのご冥福を祈ってやみません。このような素晴らしい本が絶版状態にあるというのも大変悲しいことです。

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