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2013年10月 5日 (土)

嬉しうて、そして・・・

著者 城山三郎 文春文庫

「硫黄島に死す」、「そうか、もう君はいないのか」くらいと、著者の小説はあまり読んでいなかったのですが、読めば必ず面白く、今回は、亡くなる直前に出版されたエッセイ集を拝読しました。やはり、とても面白かったです。
政治家や官僚の腐敗や不見識に対する歯に絹きせぬ論評、しかもときにウィットに富んだユーモアで。
幼少時代からずっと、自分の周りに、こういう教養も高く、人間としての徳も高い大人がいてくれたらと、ちょっと残念になってもしまいましたが、だからこそ、沢山の本を読まねばということなのだと、強く思った次第です。
いくつか、とくに印象にのこった内容を抄録しておきたいと思います。
かつての大蔵省の不祥事についての一節です。
かつて日本の官僚は優秀かつ勤勉で、しかも清潔であるといわれてきました。官僚がしっかりしているから、日本は大丈夫だと言われた時代が確かにあったのです。(中略)もちろん命がけで、などと言うのではありません。しかし少なくとも私心は捨てて欲しいのです。私心といえば、いまでは大蔵省に限らず、中央官庁で出世する早道は天下り先を作ることなのだそうです。なにしろ環境庁までが自ら環境を破壊して箱根の森を切り開きそのど真ん中にビジターセンターなどと天下り用としか思えないものをつくったりするご時世です。やはり官僚の採用方針、教育、人事を根本的に変えねばならない時期にさしかかっているのかもしれません。
この文が書かれたのが1996年3月、官僚制度の問題点はすでに20年近くも前から指摘されているのに、全く改善されていないというのは、どういうことなのかと、絶望的になってしまいます。
もうひとつ、当時総務省の官僚で内閣官房内閣参事官として個人情報保護法案の推進を小川登美夫氏との対話の時の話を語っています。
官僚からも、政治家からも「公」というものが失われてしまっている(中略)この法案を推進している内閣官房小川登美夫内閣参事官に「自分がやるべきではないと思う使命を与えられたときには、辞表を叩きつけてでも反対する、という気持ちはありませんか」と控え室で聞いたことがありましたね。すると、彼はぼーっとしているだけだった。こちらが言っている意味がわからない。そんなこと考えたこともないんです。そこで、もう一度説明すると、「役人は役目、役目で生きているんですから」と言う。小学生じゃあるまいし、政治がやるべきこととそうでないことの判断をしない。あるいは判断をしていない振りをして、責任を逃れようとしているのですね。
また、小泉純一郎が憲法改正論を出したときの話も、、2005年の正月、ランチの赤ワインでほろ酔いしながら正月気分で街を歩いていたときのこと
街角のスピーカーの声に、私の酔いは吹き飛んだ。
「総理は憲法を改正しようとしています!」
先回の総選挙では、そうした公約はしなかつた筈。酔いは吹き飛び、着物、着物、着物の列も消えた。「卑怯者、卑怯者、卑怯者!」つぶやきながら、私は歩いていた。
しかし、近所の図書館には、林真理子やよしもとばななの小説が大量に並んでいるのに、城山氏の小説は数冊しか置いていない。「落日燃ゆ」すら置いていないというのは、この図書館はどうなっているのだと、少し悲しくなってしまいました。
官僚や政府の批判をする作家の本は脇においやられ、政府の太鼓持ちをしている作家の作品が図書館ででかい顔をしているのだとしたら、それこそオーエルやブラッドベリの近未来小説の世界が到来してしまったのではないかと、そら恐ろしくなってしまいます。ただ、こういう内容の本も公平に大手の出版社からちゃんと出版される、ということは、まだ日本はもうすこしなんとかなるのではという期待もしてしまうのですが、、、そうであることを願いたいと思います。

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意思のあるところに方法はある。(Where there’s a will, there’s a way).
意思は未来時制の文章内容である。
日本語には時制がない。
日本人には意思がない。
意思のない所には方法がない。
無為無策で座して死を待つ。
為せば成る。為さねば成らぬ、何事も。
成らぬは人の為さぬなりけり。上杉鷹山

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投稿: noga | 2013年10月 5日 (土) 18時01分

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