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2018年4月21日 (土)

神経病時代

著者 広津和郎 中央公論社

「やもり」「波の上」と続くクズ男三部作なのですが、調べてみるとこれ、私小説ですね、超著者本人の実話です。。
広津和郎は、1891年12月5日生まれ、明治24年の生まれですが、1968年まで長い作家生活で、交流関係多彩、菊池寛、芥川龍之介、志賀直哉などそうそうたる顔ぶれの友人がいいる長い作家生活を過ごした人物なのですが、わたしが不勉強なだけなのかもしれませんが、明治生まれの作家のなかでは、あまり知名度というか、代表作がないようですね。
代表作はこの「神経症時代」ですが、ほんとクズ男の話です、クズ男です(しつこいか)。
徹底的に自己中心的で優柔不断な男の話なのですが、文章の才能というのはクズ男関係ないのでしょうか、話としては、イラつきながらも、最後まで読んでしまう筆力がありました。
明治生まれの作家は、ひょっとすると、こういうクズっぽい作家がうじゃうじゃいたのではないかと想像できます。
しかし、残念ながら、本書、面白かったです。

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2018年4月20日 (金)

えび(CHEMMEEN)

著者 シヴァシャンカラピライ 新宿書房

世界50か国語に翻訳され、映画化もされたという大ベストセラー作品ということなのですが、日本では1988年に一度出版されただけで絶版なのです。
「紅楼夢」以来、ひさしぶりに電車乗り過ごしそうになるくらい面白かったですけどねぇ、どうして日本ではヒットしなかったのでしょうか。
南インドのケララ州に住む漁師たちの生活が描かれ、当時(1950年ごろ)の、インドの漁村の文化や風習もうかがい知ることができる貴重な一冊だと思います。
本書、当初のインドでは、人が4人あつまると、この「えび」の話が始まるというくらいのベストセラーだったらしいです。
面白いですから、わかる気がしますが、日本人にはあまり受けないのですね。
そういえば、日本に入ってきているインド文学って圧倒的に少ない気がします。この作者の本ももっと読んでみたいのですが、、残念ながらなかなか見つけられません。

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人間の條件

著者 五味川順平 文春文庫

中谷美紀のインド旅行記から始まって、どうして「人間の條件」にたどり着いてしまうのか。。
いやぁ~文学って本当に面白いですね。
中谷美紀の「インド旅行記」面白かった→インド本読み漁り→インド本を多く出版している三一書房がどういう出版社なのか気になり調べてみた→ベストセラー本「人間の條件」で有名な会社らしい
というわけでたどりついた「人間の條件」、きっかけはやはり中谷美紀なんですよ。。
しかしこの本、、内容が重い、暗い、つらすぎる、、
今の日本の状況などをみると、戦争という国策に人生を翻弄させられた主人公や同時代人のストーリーで、タイムリーな本と言う気もします。
学校の道徳の教科書でスポーツ選手の根性話を子供に読ませるくらいだったら、この本の根性話よませたほうがまだ道徳の勉強になるのではなんて思ってしまいました。
一巻読んだだけでせつなくてつらくて、あと5巻も読むのがヘビーなんですよ。
自分の祖父もシベリア抑留者であり、読まなきゃいけないのでしょうが、、つらい、、
第一話は鉄鋼会社社員の主人公が満州にある鉱山で現地の労働者たちと丁々発止をする話なのですが、、自分は良心をもった穢れのない人間だと信じて生きてきた人間も、戦争中は、お国のためという言い分で、実は最終的に我が身かわいさで、敵国の人間を平気で蹂躙する心を持たねばならぬわけで、何度も心の揺れ動く主人公に読んでいて疲れてきてしまいました。
この作品は仲代達也が主演で映画化もされているということで、映画も見てみたいと思いました。
また2巻目以降を読めるような気持ちになりましたら、感想をもうすこし詳しく書きたいとおもいます。

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2018年4月 5日 (木)

インド青年群像

著者 渡辺建夫 晶文社

ボンベイやカルカッタ、ゴアなど、インドの民宿のようなところに滞在して、街の労働者たちと会話をした記録は面白く、また、インドの文学や音楽、映画など、ちょっとマニアックな内容がとても興味深かったです。
本書でおもしろかったのが、同じ下宿の住人のひとりに困っているから貸してくれといわれて貸したのに、「ありがとう」もなく、貸した金を踏み倒しても顔を合わせても「すみません」もないというエピソードが出てきました。
他の人が書いたインドの話でもときどきこの「ありがとう」問題はでてくるのですが、インドでは「ありがとう」と「すみません」があまり使われないので、ヒンズー語の映画を見ていても、そういう場面だけ、英語になっているという記述が本書にあったので、やはり本当にそうなのかなぁ、、なんでもかんでも「すみません」と「どうも」という日本人とすごい対照的な国民なのだなぁと思いました。。
本書は1978年と、40年も前ですので、今のインドの様子とはまるで違うのかもしれませんが、農村などはあまり違わないのかもしれません。
この著者はどういう方なのだろうと、ネットで調べても略歴などが詳しいことが検索できませんでした。数冊の本をだしてはいるようなので、また他の本もよんでみたいと思います。

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2018年4月 4日 (水)

三一書房が気になりまして

最近、インド本を読み漁っておりましたところ、その出版社の多くに三一書房がありました。

なんだろう、労働問題を得意とする左翼系の出版社なのだろうかしら?
インドのカースト問題などと同時に、日本の差別問題の本も多く出しているようです。。
ということで、どういう出版社なのかとちょっと調べてみましたら、なんか、会社が労働争議にあっているようなのですよ。
社員をロックアウトしたりって、、なにこれ、
しかも1998年ということで、結構最近の出来事ですよ。(といっても20年前ですが)。
なんと労使が和解したのが2011年ということで、ずいぶん長いこと争議が続いてました。
労働問題を取り扱っている本家本元の出版社で労働争議するなんて。。?なになに、どういうことよ?
で、「三一書房」で検索しただけで、学研争議とか、明石書店争議とか、光文社争議とか別の出版社の争議の話まで出てきました、、出版業界はもめごとが日常茶飯事jなの、どうしたの?
検索結果ではいろいろな記事が出てくるのですが、個人のブログなどが多くて、なかなか要領を得なかったのですが、そのいろいろな記事を総合すると・・・
社会派の出版社だった三一書房が2006年から2011年まで労使のトラブルで出版活動が妨げられてきた。特に原発の危険性に長年警鐘を鳴らしてきた三一書房にもかかわらず福島原発事故が起きた状況下に新刊も出せず、社員は悔しい思いをしたと語られています。
2011年6月に三一書房臨時株主総会で出版部門の免責的事業譲渡が決議。出版部門の免責的事業譲渡により、従業員に労働債権と引き換えに三一書房が譲渡され、新生三一書房として生まれ変わったみたいです。。そうだったんだね~
「三一書房の良心の灯を支える表現者の会」の呼びかけ人として、鶴見俊輔、馬場あき子、別役実、岡留安則、唐十郎などなどの著名人を含む多くの知識人が運動していたみたいで、良心の灯が支えられてよかったです。
極右の出版社から極左の出版社まで自由に活動ができる国がまともな国といえるなかもしれませんね。
こちらの出版社はかなり左系の本が多いのかもしれませんが、それでもT.S.ピライのようなインドの大文学者の本まで出しているのですから大したものだと思いますよ。きっとこれからもお世話になる出版社かと思います。
しかし長年労働問題の本を出してきた出版社で、10年以上も労働争議を解決できないって、、なんだか悲しい話ですね。うーむ、、
それにしても、最近知らないことばかりです、、このセリフが多すぎる気がします。

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清掃夫の息子

著者 T・Sピライ 三一書房

インドのヒンズー教の悪しき習慣カースト制度の最下層の職業とされていたトイレの清掃夫の息子に生まれた主人公のチュダラは、この理不尽な仕組みからぬけだしたいと考え、自分はこのカルマから抜け出せなくても、息子には違う人生を味あわせたいと、人一倍働き、無駄遣いを一切せず、家を清潔にし、妻や息子モハン(金持ち風の名前)に立派な格好をさせ、息子には学校に通わせ、教育を受けさせようとかなりの努力をする。将来は金をためてアパートを買おうと願っている、そのために、時には官僚のスパイとなり、親友を売って親友の家族を破滅に追い込むこともしてしまう。しかし、チュダラの夢はかなわず、妻とともにコレラに倒れ、幼い息子を残し無残に亡くなってしまう。

そして、チュダラが命がけで蓄えた金は信用していた上司に着服されてしまい、モハンはホームレスとなって生きてゆくしかなくなる。

やがて青年となったチュダラの息子モハンは今も清掃夫をしている。かつて父のチュダラの陰謀で命を亡くした友人の息子が彼の親友だ。しかしモハンは父とは違う、組合を作り、賃金の値上げなどの要求などをして戦っている。清掃夫の仕事を恥ずかしいと思うのではなく、人が必要とする、誰かがする必要のある仕事だと考えているのだ。最近の人々は、清掃夫はちょっと生意気だと思うようになったという。

それでよいと思う。清掃してくれるひとも、洗濯をしてくれる人も、かつて、そして今もインドでは最下層のカーストとして、蔑まれ、時に虐待される、しかし、もし彼らがインドからひとりもいなくなったら、誰が掃除をし、だれが服を洗うのか、高いお金をだして、人を雇うか、いままで最低の仕事として蔑んでいた仕事をカルマだと割り切り自分で行うことになるのか。大変な仕事をしている人は軽蔑されるのではなく、尊敬されるべきだ。うまく世の中を渡る人間、安心して教育を受け勉強に集中できる環境にいる人ばかりではないのだ。もちろん、努力してお金を稼ぎ、豊かな生活を享受することは幸せなことで、だれでも願うことだろう、でもその生活は、たまたま金銭的、精神的、肉体的に努力できる生活環境があったのではないのでしょうか、いろいろな幸運と本人の努力両方があって豊かになれるのだとしたら、貧しい生活をしている人を、努力が足りなかったのだと軽蔑することはできないと思うのです。

ガンジーも認めたカースト制。いまのインドはその矛盾をどう乗り越えているのでしょうか?

本書は1986年日本語にはじめて翻訳されました。

作者のタカジ・シヴアサンカラ・ピライはインドではインドの文化勲章にあたるパドマ・ブーシャン賞を受賞し、また、インドの最高文学賞も受賞した作家で、世界50か国で翻訳され映画化もされた「Chemmeen」という作品もある作家ということですが、この世界50か国に日本には翻訳されていないようです。英語版を探すしかないのかなぁ。。

インドの南部ケララ地方は貧しく、共産主義の運動も盛んな地域ということですが、この地方の言語、マラーヤラム語の文学も沢山あるそうですが、日本版Wikiのマラーヤラム語の説明ではこの本の著者ピライの日本語版翻訳がいくつかあると書いてあるので、国会図書館の所蔵で検索したところもう一冊「えび : ケーララの悲恋物語」という本がみつかりました。

そして、なんと、ちょうど今読みかけの本、渡辺建夫の著書「インド青年群像」に、この「チェミエン」のことが登場しており、謎が解けました。「Chemmeen」が「えび : ケーララの悲恋物語」ということのようで、ちゃんとなんと新宿書房という出版社で発刊されていたようです(廃刊になってるみたいです)図書館にあるようですので、借りてみようと思います。最近は図書館の検索システムが進化して廃刊になってしまった本ばかり読んでいるよ自分にとってはありがたいかぎりです。

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